赤い車のホイール

なぜフェラーリではなく「ディーノ」なのか

独特なスタイリングを持つディーノは、現在では手に入れることが難しい名車として知られています。

「ディーノ」というこの名前が初めて世に出たのは1969年のこと。ディーノとはフェラーリの創始者エンツォ・フェラーリの亡き息子アルフレード(愛称ディーノ)の名前を冠したものだといわれています。ディーノ206GTは、今でこそフェラーリらしさともいうべきミッドシップレイアウトのエンジンを初めて搭載したモデルであり、後継車の246GTにも受け継がれました。
(念のため補足しますが、フェラーリのすべてのモデルがミッドシップレイアウトのエンジンというわけではありません)

また、ミッドシップレイアウトのエンジンを従来の横置きではなく、縦置きにしたモデルでもあり、このレイアウトを考案したのが、父の会社でエンジニアを勤めていたアルフレードだったと言われています。

販売当初(206GTのとき)はフェラーリのブランド名が与えられず、人気も乏しかったようです。なぜなら、206GTは生産台数がわずか150台しかなく、市販車というには流通が少なすぎましたし、「フェラーリといえばエンジンの力強さ」というイメージが浸透していたから。2.4リッターV6エンジンを搭載したディーノは、フェラーリと言うにはやや非力なモデルとみなされたためでした。

評価を底上げした246GT

初代のディーノ206GTのエンジンは、8,000回転で最高出力185馬力。決して低性能ではないのですが、フェラーリとしてはパワーが乏しいという課題があって、どちらかといえば不人気でした。

しかし、その後に排気量を2,400ccアップし、市販車として販売された246GTは、最高出力が195馬力まで向上。フェラーリとして見ると小さめのエンジンではあったのですが、この改良によりスムーズな加速ができるようになったディーノ246GTの評価はどんどん上がっていき、現在では名車と称されるまでになりました。

至高のデザイン

ディーノという名前でも、フェラーリのロゴがなくても、姿かたちはどこからどう見てもフェラーリ。ディーノのボディデザインは、著名なイタリアのカーデザイン会社ピニンファリーナによるものだからです。特に、ディーノ246GTの滑らかさと直線が融合したボディライン、その美しさと機能性を高いレベルで結びつけた造形美は、後世のフェラーリへ与えた影響を考慮すると「ピニンファリーナの傑作」と言っても決して過言ではないでしょう。

ディーノは、フェラーリの名を冠さないフェラーリですが、その美しさは今日でも高く評価され、その地位を不動のものとしています。