本

フェラーリが作品にアクセントをもたらしている文芸作品はいくつかあります。作品に登場するフェラーリのモデルとともにどういった役割やモデルの特徴についてを紹介したいと思います。

晩秋行/大沢在昌

まず一つ目は「晩秋行/大沢在昌」です。新宿鮫などのハードボイルド作品で知られる大沢在昌が、2022年に発表した作品である晩秋行では、主人公と因縁のある人間が乗っていた車として、フェラーリの250GTカリフォルニアが登場します。映画「フェリスはある朝突然に」でも登場したこの車は、フェラーリの代表的な車種であり、それでいて106台の生産数しかなく、オークションに登場すれば高値がつくフェラーリファン垂涎のモデルと言えるでしょう。

作者である大沢在昌は、登場させた理由としてバブルを感じさせる名車としています。どちらかというと作中ではメインというよりも、舞台装置としての面が強い250GTカリフォルニアですが、イメージしやすいので良い選択だったかもしれません。

ぼくのフェラーリ/坂元純

二つ目は「ぼくのフェラーリ/坂元純」です。第7回椋鳩十児童文学賞受賞作で、児童文学にフェラーリが登場してくるのは少し珍しさを感じるのではないでしょうか? こちらは資産家だった祖父からフェラーリを相続するという話で、きちんとしたストーリーのもとに練りこまれている児童文学作品です。そして、相続するモデルはフェラーリ166MMバルケッタというこれまた珍しいモデルになります。バルケッタとは小舟を意味するイタリア語。デザインがまるで小舟のように見えるからついた愛称です。

166MMは初めてフェラーリが市販した歴史的なモデルで、生産台数はおよそ30台ほど。それが日本に持ち込まれ、さらに相続すると考えると少し恐ろしいと感じてしまうかもしれません。

フォードVSフェラーリ/A.J.ベイム

三つ目は「フォードVSフェラーリ/A.J.ベイム」です。1966年ル・マン24時間耐久レースの実話をもとに作られたこの作品は、2019年に映画化もされている有名作品。その際にフェラーリがレースに出していたモデルこそが、フェラーリ330P3となります。

作中では負ける形となりますが、フェラーリ公式をして「信じられないほど完璧な美しさを備えた競技車両」とされるデザインと素晴らしいエンジン音が魅力で、小説で聞けないのは残念なほどです。

映像で見るインパクトが大きいため、やはり文字での登場となるとそこまでは多くないかもしれませんが、車が小道具や舞台装置として成立するところにフェラーリの知名度やブランド力を感じます。また、モデルも新旧さまざまなものが取り扱われるのも面白いところ。今後も新たなマシンが登場するかが楽しみです。